先週の土日に家族旅行で行った旅館は、かなり安かった。一泊二食付きで4900円、素泊まりだとたったの3000円。といってもボロボロの汚い旅館というわけではない。開業して2年目で建物はきれいだし、それなりの風情はある(あくまでも、それなりではあるが)。
 ただ、普通の旅館とはちょっと違う。夜の11時から朝の6時まではフロントが不在になる。布団を敷いてはくれない。そういったことはやってくれない。
普通の旅館が行うサービスを省いて、コストを減らしている。だから安い、ということなのだろう(もちろん、その他の企業努力もあるだろうけれど)。しかし、それでいてそれなりに繁盛しているということは、そんなサービスを要求する人は少なくなっているのだろう。
 旅館に着いて部屋でゆっくりしようかという時に、仲居さんがお茶を入れにきたり、布団を敷きにきたりと、そうした時に何とはなしに違和感を味わったことのある人は多いだろう。この旅館の場合は、そういったことがまったくない。建物が違うだけで、家にいるのとほとんど変わらない。1日だけ引越しをしたようなものだ。旅行に行って非日常を味わうのではなく、日常を外に持出す。その方が自分の意識化された世界だけにとどまることができ、安心だということなのだろう。